先日スペシャライズドから発表されたS-works Tarmac SL7やTREKのEmonda SLR、CANYONのULTIMATE CFRなどはすべて、6.8kgになるように作られています。
これはUCIの規格において、UCIのレースにでるバイクは6.8kgを下回ってはならないというルールに基づいています。
アマチュアサイクリストにとってこのUCIの規格は守る必要があるのでしょうか?
答えは、ノーです。
この記事の内容
UCI規格:6.8kg
もともとUCI規格6.8kgというのは、過剰なフレームの軽量化は安全性を損なうといった意味があって設定されたものでした。
一方、カーボンファイバーの技術は日進月歩であり、より引張強度が高く、弾性率のコントロールもでき、カーボンファイバー同士を結合する樹脂(プレプリグ)の量を減らして軽量したカーボンファイバーを作ることができるようになってきました。
その結果、十分な強度や安全性を保ったまま6.8kg以下のロードバイクを製造できるようになっています。
一方でこのUCI規格のせいで、それ以下のロードバイクを作ったとしてもプロが使えない為、プロ用には製造しても意味がありません。
しかし一方のアマチュアサイクリストにとっては、UCIの規格を守る必要がある人は、UCIレースに分類されているようなレースのみです。
例えば、ツールド沖縄のエリートクラスや、全日本選手権、ツアーオブジャパンなどがそれに該当します。
つまりこれらのレースに出る人にとっては、車重は6.8kg以上でなければなりません。
…紺野さんや高岡さんクラスということです。
富士ヒルやマウンテンサイクリング乗鞍
アマチュアサイクリストにとっての最高峰ヒルクライムレースが富士ヒルや乗鞍だと思います。
特にヒルクライムレースなので車重には気を使いますよね。
これらのレースはUCIに分類されたレースではないので、規格6.8kgを守る必要はありません。
例年優勝者やシングルでゴールする方々のバイクは6.8kgをゆうに切っています。
2019年マウンテンサイクリング乗鞍3位の梅川選手
見るからに軽そうな自転車ですが、なんと5.05kgとのこと!!
ちなみに内訳は以下の通り。
フレーム:Cannondale『SuperSix Evo Hi-Mod』
http://morimotty.com/umepyons-bike-2019/
コンポーネント:SRAM『RED22』(クランク長175mm)
チェーンリング:Wolf Tooth『シングルチェーンリング』34T
チェーン:KMC『X11SL』
ブレーキ:KCNC『CB3』
ペダル:Shimano『PD-R9100』
ホイール:Lightweight『GIPFELSTURM』
タイヤ:Vittoria『Corsa Speed』23cチューブラー
クイックリリース:Silverockチタン製
ハンドル:ZIPP『SLC2』
ヘッドセット:eecycleworks『eeTop / eeNut』
バーテープ:BENOTTO(ベノット)
ステム:KCNC『SC Wing』スカンジウム素材
シートポスト:フレーム純正品
サドル:AX-lightness『Phoenix』(フェニックス)
ボトルケージ:無し
ジャージ&ビブ:SUNVOLT『S-RIDE PRO クライマースーツ』XSサイズ
サイコン:無し
ヘルメット:Lazer『Z1』
シューズ:LAKE『CX301』
ソックス:SIXS『Short S』
聞いたことのないブランドのパーツもいくつかありますが、どれもこれもめちゃくちゃ軽量なパーツで構成されています。
こんな軽量バイクで山を走ればいつもよりもいいタイムが出るに違いないと思いませんか?
AX-Lightnessが5.4kgのディスクロードバイクをデビュー
梅川選手もサドルで使われているAX-Lightness、名前の通り「軽さ」を重視した製品の開発を行うメーカーです。
AX-Lightnessは、ドイツのメーカーで自社の自転車ブランドBenottiとして非常に軽量な新しいロードバイクを発表しました。
Vial Evo Discは、最軽量の構成で自転車全体の重量がわずか5.4kgとのことです。
梅川選手の限界まで軽量化されたリムブレーキのバイクには及びませんが、完成車で購入して5.4kgというのは凄くないですか?
そんな軽量バイク、どうせ走らないペラペラバイクなんでしょ?と思われるかもしれませんが、AX-Lightnessによると、Vial Evo Discのフレームの重量は、Mサイズが750gで、ドイツの工場で「30時間以上の手作業」によって達成された数字です。
Tarmac SL7がエアロや完成車として6.8kgになるように考えて”あえて増して”800~900gなので極端に軽量化されているとは言えません。
750gという軽量フレームにもかかわらず、Vial Evo Discのライダーの体重制限は120kg(一般的!)であり、その設計は明らかに「日常使用への適合性を損なうことなく、軽量、安定性、快適さ」に重点を置いています。
梅川選手の使うCanonndale SuperSix EVO Hi-MODと同じくらいの重量ですが、このフレームは昔ピーター・サガンが使ってスプリントして勝っていたバイクです。
Vail Evo Discも、彼のモンスターのようなパワーを受け止められるだけの実用に耐えうるフレームと考えても良いと思います!ということは、アマチュアサイクリストに僕たち程度で何かを感じるようなショボイフレームとは考えにくいですね!
UCI規格6.8kgがプロだけのものになる日
UCI規格の6.8kgはつまるところプロの為にある規格です。
アマチュアサイクリストにとって守るべき理由もなければ、安全面を考えてももう十分にそれ以下の重量のフレームを作ったとしても通常使用に耐えうる強度のフレームを作ることができる時代です。
スペシャライズドは実際にトライアスロン用にUCIの規格には準拠しないTTバイクをリリースしています。
フロントフォークの大きさやフレームのジオメトリーがUCIの規格には準拠していませんが、理論的にTTバイクとして最速とスペシャライズドが考えて作り出したのがこのバイクです。
そして僕たちアマチュアサイクリストがこのバイクに乗っても誰に怒られることはありません。むしろ速くて最強っす。
また噂ではUCI準拠しない最速VENGEの子どもが秋くらいに発表されるとのことです。
ロードバイクとしてUCIに準拠しませんが、よりエアロを突き詰め、かつ軽量化し、登れるフレームを出してくるのではないでしょうか。
この流れの背景には、UCIに準拠する限り、もうエアロも軽量化も限界に達しているということがあります。
各社似たり寄ったりのフレーム、数年スパンで新車が出るも、旧型とどう違うの?細かいレベルからお分かりいただけると思います。
このままでは、各社もう新型フレームを何を謳い文句にリリースして良いのか分からない!という状態なんだと思います。開発の余地がないんです。
この状態を打破するために、次の一手はUCI非準拠、マーケットとしては90%以上を占めるアマチュアサイクリスト向けのフレーム開発になるのではないかと想像します。
これがタイトルの意味です。
UCIが規格を変えて6.3kgとかにしてくれたら、きっとメーカーは大喜びで新しいフレームを作り、「あのTarmac SL7を超えた」とか言って売り出してくるんでしょうね…僕らの散財はいつまで経っても止まりませんね!
ホント、ロードバイクは貴族のスポーツやでえ。